今回は、正しい生命保険の死亡保障の設定方法 「ニーズ積み上げ方式」と「ヒューマンライフバリュー方式」のご説明をいたします。
生命保険の死亡保障の設定について
生命保険の死亡保障の重要さは分かっていても、どの金額までかければよいのかは迷うところです。
良くないのは以下のような設定方法です。
- 生命保険の営業職員、保険ショップの店員の言われるがままの死亡保障で設定する
- なんとなくの金額で設定する(年収の○○倍など)
上記の設定方法には以下の危険があります。
- 情報格差(営業職員、店員の方は勧誘のプロである)を悪用され、不必要な死亡保障を設定されてしまう
- なんとなくの金額で設定したため、死亡保障が不足してしまう
生命保険の営業職員、保険ショップの店員と同じレベルの知識までは難しいにしても、この「軸」があれば、ぶれない、悩まない保険選びができるようになります。
ご覧いただいているあなたの生命保険の「軸」に関して正しい知識を備えていただきたく、今回は「ニーズ積み上げ方式」と「ヒューマンライフバリュー方式」についてご紹介します。
ニーズ積み上げ方式
ニーズ積み上げ方式の概要は以下のとおりです。
- 残された家族に必要な金額を項目ごとに積み上げる
- すでにある金融資産(現金・預金)や生命保険を考慮に入れる
- 公的な社会保障からの受給も考慮に入れる
残された家族に必要な生活費、教育費、老後の資金などの資金ニーズに焦点を当てた死亡保障の設定方法です。
それらの資金ニーズの把握には、以下のようなセルフチェックが役立ちます。
- 住宅ローンの返済残高はどれくらいか?
- その他の年間の生活費用はどれくらいか?
- 子供のための資金積立はあるか?(学費保険など)
- 緊急時にはいくら必要か?
- クレジットカードの負債はあるか?
- 残された家族ための老後の資金は必要か?
- 対象となる人の葬儀費用、終末医療の費用は考慮に入れるか?
- 所有住宅、土地などの相続税はあるか?
ニーズ積み上げ方式の目的は、残された家族のに必要な合計の費用を算出することです。その必要金額から、すでにある金融資産(現金・預金)や生命保険、公的な社会保障からの受給金額を差し引くことで、不足分(≒生命保険で必要な死亡保障額)を算出するのです。
これらの項目について詳しく見ていきましょう。
葬儀費用・終末医療など
これらには以下のものが含まれます。
- 葬儀費用
- 病気などで亡くなった場合の医療費用
- 相続税
- 遺言の作成費用
借金の返済
これらには以下のものが含まれます。
- 住宅ローン
- クレジットカードのローン
- 教育ローン
残された家族の生活費
これらには以下のものが含まれます。
- 食費
- 光熱費
- 家賃
- 服飾費
- 習い事、教育費
なお、残された配偶者(夫または妻)が新たに働き始めることによって、収入の減少を抑えることができます。また、逆に残された配偶者(夫または妻)が新たに働き始めることによって、追加の費用(ベビーシッターなど)がかかることもあります。
このようなプラス(新たな収入源)とマイナス(追加の費用)の両方を考慮する必要があります。
また、この「残された家族の生活費」をいつまで必要として見込むのかも大事な観点です。以下の2つの考え方があります。
- 残された配偶者(夫または妻)が定年退職するまで
- 子供が経済的に自立するまで(大学卒業まで)
老後の貯蓄
これらには以下のものが含まれます。
- 老後の最低限の生活費用
- 老後のゆとりある生活のための費用
残された配偶者が、亡くなった配偶者に経済的に大きく頼っていた場合は、日常の生活費だけではなく、老後の生活にも大きな影響があります。
老後の生活にいくら備えが必要なのかは、老後の生活設計を踏まえて検討する必要があります。
また、この項目では、最低限の生活費はだけではなく、ゆとりある生活のための費用(旅行など)も考慮します。
保有している金融資産(現金・預金)や他の生命保険など
これらには以下のものが含まれます。
- 現金・預金
- 株券、投資信託などの金融商品
- 他の生命保険
- 勤務先からの弔慰金
- 公的な社会保障(遺族年金・老齢年金)
今まで述べてきた項目との違いは、これらの合計は、他の項目との合計から差し引かれるということです。
=不足分(≒生命保険で必要な死亡保障額)という式になります。
企業にお勤めであれば、規定に基づき弔慰金が受け取れることもあります。さらには公的な社会保障(遺族年金・老齢年金)もあります。
これらを必要額から差し引くことで、正確な生命保険の死亡保障額を算出することができます。
ニーズ積み上げ方式の簡単な計算例
ニーズ積み上げ方式の簡単な計算例をご紹介します。
45歳、一家の稼ぎ手の方が亡くなった場合に必要な保障額
- 葬儀費用・終末医療など・・・500万円
- 借金の返済・・・3000万円(住宅ローンなど)
- 残された家族の生活費・・・4800万円(月20万円×12ヶ月×20年 ※定年を65際として)
- 老後の貯蓄・・・2000万円
- 保有している金融資産(現金・預金)や他の生命保険など・・・▲3000万円(マイナス)
これらの合計が7300万円ですので、7300万円の死亡保障が必要ということになります。
ヒューマンライフバリュー方式
ヒューマンライフバリュー方式の特徴をご説明します。
将来の収入を見込む
ヒューマンライフバリュー方式では「もし元気に働いて○○歳まで収入(稼ぎ)があったら」という、その人の稼ぐ力に着目します。
例えば、40歳で年収500万円、65歳まで同じ収入だとした場合は、その間(40歳から65歳までの間)に1億2500万円稼ぐことになります。
この額が失われることに対して保険をかけるという考え方です。
(※本来はインフレや金利変動などを織り込んだ特殊な計算をしますので、実際の額は少なくなります。)
本人の生活費は差し引く
例えば、本人(一家の稼ぎ手)の月収は30万円で、本人を含めた家族3人の生活費が20万円だとします。
20万円の生活費のうち、万一本人が亡くなった場合は、その方の分の生活費は今後はかからないことになりますので、より少ない費用でやりくりができることになります。
仮に、本人の生活費が6万円だとした場合は、残された家族2名は毎月14万円(20万円ー6万円)でやりくりができることになります。
ヒューマンライフバリュー方式での必要保障額の設定にあたっては、この「本人の生活費」を差し引いて計算します。
保有している金融資産(現金・預金)や他の生命保険なども差し引く
「ニーズ積み上げ方式」と同じように、保有している金融資産(現金・預金)や他の生命保険などは差し引きます。
こうすることで、無駄のない、本当に必要な死亡保障額を算出することができます。
「ニーズ積み上げ方式」に比べて死亡保障額は低くなる傾向がある
「ニーズ積み上げ方式」を使って「あれもほしい」、「これもやりたい」という積み重ねで必要な保障額を計算するとどうしても高くなりがちです。
一方、「ヒューマンライフバリュー方式」では本人の稼ぐ力が基準になりますので、その範囲内の、身の丈にあった保障額となります。
したがいまして、「ヒューマンライフバリュー方式」のほうが「ニーズ積み上げ方式」に比べて死亡保障額は低くなる傾向があります。
ヒューマンライフバリュー方式簡単な計算例
ヒューマンライフバリュー方式の簡単な計算例をご説明します。
45歳、一家の稼ぎ手の方が亡くなった場合に必要な保障額
- 本人の稼ぐ力(65歳まで)・・・1億円
- 本人の生活費・・・▲2000万円(マイナス)
- 保有している金融資産(現金・預金)や他の生命保険など・・・▲3000万円(マイナス)
これらの合計が5000万円ですので、5000万円の死亡保障が必要ということになります。
「ニーズ積み上げ方式」と「ヒューマンライフバリュー方式」の考え方、違いがお分かりになりましたでしょうか。
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まとめ
正しい生命保険の死亡保障の設定方法 「ニーズ積み上げ方式」と「ヒューマンライフバリュー方式」について(かしこい生命保険の見直し・加入)
- 生命保険の死亡保障の設定について
- ニーズ積み上げ方式
- ヒューマンライフバリュー方式
正しい知識を身に付けて、かしこく生命保険を選びましょう。
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