今回は貸借対照表に関して、5分間で全体像をご理解いただけるように説明します。
貸借対照表(Balance sheet)とは
貸借対照表は、ある時点におけるお金の調達額とその使いみちを表したものです。
貸借対照表を(B/S、ビーエス)と呼ぶことがありますが、これは英語の「Balance Sheet」(バランスシート)の頭文字をとったものです。
貸借対照表で分かること
貸借対照表で分かることは、ざっくり言えば「お金がどのように調達され、そのお金がどのように使われているのか」です。
事業を始めるには、まずは事業の資金調達からです。その資金を使って利益を出すための投資(費用の支出)を行い、そこで得た利益がさらに事業資金となって循環します。
ある一定の時点における、資金の調達と使いみちを、ちょうどカメラでシャッターを切るように映し出したものが貸借対照表です。
別の記事で解説した「損益計算書」が「一定期間」のお金入口と出口を表すものであるのに対して、「貸借対照表」は「ある一定の時点」のお金とその使われ方を表しています。
貸借対照表の全体像
貸借対照表の全体像は以下のとおりです。(クリックでそれぞれの項目に移動します)
お金の使いみち |
お金の調達方法 |
貸借対照表においては、上の図のように、右側にお金の調達方法である「負債」と「純資産」が示されます。
そして、左側にそのお金がどのように使われているのかが「資産」として示されます。
「資産」と「負債+純資産」の一致(バランス)について
「お金の調達方法(負債+純資産)」と「お金の使いみち(資産)」は必ず一致し、バランスが取れた状態になります。
なので貸借対照表のことを「Balance sheet」(バランスシート)と呼ぶのです。
これを式で表すとこうなります。
資産=負債+純資産
式を入れ替えると、次の式も成り立ちます。
純資産=資産ー負債
次以降でそれぞれの項目について解説します。
資産(Assets)
資産とは、組織が事業を行うために所有または使用する資源のことです。
資産はさらに「流動資産」と「固定資産」に大別されます。
流動資産(Current assets)
流動資産とは、現金およびその他の資産のうち、通常の事業のサイクル(通常は1年以内)の中で現金へ換金される予定の資産のことです。
具体的には以下のような資産が該当します。
- 現金(Cash)
- 有価証券(Marketable securities)※一時的な投資で容易に換金できるもの
- 売掛債権(Receivables)※顧客や外部業者などから一定の期日までに支払いを受けられる権利のこと
- 棚卸資産(たなおろししさん、Inventory)※顧客に売ることができる状態の商品のこと。製造業であれば、原材料、完成品も含む
- 前払費用(Prepaid expenses)※サービスの対価として支払いを済ませたが、まだそのサービスを受け取っていない、あるいは使っていない状態にある費用のこと
固定資産(Noncurrent assets)
固定資産とは、一年を超えて使われる資産のことです。
固定資産はさらに、有形固定資産と無形固定資産に大別されます。
有形固定資産(Tangible assets)
有形固定資産とは手で触れることのできる資産のことです。
例
- 土地(Land)
- 建物(buildings)
- 設備、什器備品(Equipment)
無形固定資産(Intangible assets)
無形固定資産とは、手で触れることのできない資産のことです。
知的財産が無形固定資産の典型例ですが、「のれん」も無形固定資産として取り扱われます。
例
- 特許権(Patents)
- 商標権(Trademarks)
- 著作権(Copyrights)
- のれん(Goodwill、企業買収で生じた、買収した企業の時価額と購入額との差額)
減価償却累計額(Less accumulated depreciation)
固定資産(有形、無形とも)は永遠にその価値が続くわけではありません。
年の経過とともにその価値は下がっていくことになります。
貸借対照表では、経年劣化による価値減少分を含めて正確に資産の状況を表示する必要があります。
かといって、購入額から経年劣化分を差し引いて表示すると、いったい当時いくらで買ったのかが分からなくなってしまいます。
そこで、購入金額と、経年劣化による価値減少分を切り分けて生じするのが貸借対照表上のルールになっています。
毎年の経年劣化による価値減少分を累積したものが減価償却累計額です。減価償却累計額は、有形固定資産、無形固定資産それぞれに適用されます。
負債(Liabilities)
負債とは、資産を調達するために組織が負った、借金または義務のことです。
なお、負債はさらに「流動負債」と「固定負債」に大別されます。
流動負債(Current liabilities)
流動負債とは、1年以内に支払わなければならない債務のことです。
次のようなものがあります。
- 買掛金(Accounts payable)
- 短期借入金(Short-term debt)
- 1年内に返済予定の長期借入金(Current portion of long-term debt)
固定負債(Noncurrent liabilities)
固定負債とは、返済期限が1年を超える債務のことです。
例は以下のとおりです。
- 長期借入金(Long-term debt)
- 社債(Corporate bond)
純資産(Shareholders’ equity)
純資産とは、資産から負債を差し引いた額のことです(純資産=資産ー負債)。
純資産は、以下のような資産が含まれます。
- 資本金(Capital)※株主からの出資額
- 利益剰余金(Retained earnings)※利益から、税金や配当金を差し引いた金額のこと
なお、資本金の評価は、時価額(市場価値)をベースに行います。
負債と純資産の違い
負債と純資産の違いは以下のとおりです。
負債・・・外部から調達した資金であり、返済義務を負う
純資産・・・株式発行や利益の累積による資金であり、返済義務を負わない
以上の違いから、負債を「他人資本」、純資産を「自己資本」と呼ぶことがあります。
純資産がマイナスになるとはどういうことか
貸借対照表においては、「資産=負債+純資産」の式は常に成り立ちます。
仮に、負債(例、1億円)が総資産(8000万円)を上回ると、純資産がマイナス(▲2000万円)になってしまいます。
例えると、企業が保有するすべての資産を売り払ったとしても、負債の返済をまかなえないという状態です。
これがいわゆる「債務超過」です。
債務超過となっている企業は倒産の可能性が高くなります。
いかがでしたでしょうか。
理解が深まりましたでしょうか。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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