今回はキャッシュフロー計算書(C/F)に関して、5分間で全体像をご理解いただけるように説明します。
キャッシュフロー計算書(Statement of Cash Flows)とは
キャッシュフロー計算書は、特定の期間(通常は会計期間)におけるお金(キャッシュ)の流れを数値で示した書類です。
キャッシュフロー計算書を(C/F)と表記することがありますが、これは英語の「Statement of Cash Flows」の頭文字をとったものです。
なぜキャッシュフロー計算書が必要なのか?
どのくらいの売上があり、その結果いくら収益として残ったのかは損益計算書を見れば分かるのに、なぜキャッシュフロー計算書を別に作らないといけないのでしょうか。
その答えは「収益の発生とキャッシュ化のタイミングとの違い」にあります。
通常、企業は掛け取引(売掛・買掛)で商売をします。
つまり、先に顧客に商品やサービスを提供して、後で顧客から代金を支払ってもらうという商売です。
この商売をしている以上、どうしても商品やサービスの提供から現金受取までの間にタイムラグが生じます。
会計上は、「商品やサービスを販売(≒提供、引渡)した時」に収益として認識されます。(これを実現主義といいます。反対に、入金があって初めて売上として認識する考え方を現金主義といいます)
仮に会計上の収益が発生したとしても、現金(キャッシュ)化されるのは後回しになります。
したがって、見かけ上は収益が十分に出ている企業でも、手元の現金が少ないので資金繰りに困る企業もあります。
そのような、損益計算書では把握できない、現金(キャッシュ、cash)の流れ(フロー、flow)を示したのがなぜキャッシュフロー計算書というわけです。
キャッシュフロー計算書で分かること
3つの事業活動ごとに現金の増減が分かる
キャッシュフロー計算書を見れば、どの事業活動からどれだけ現金の増減があったのかが分かります。
また、その増減の内訳(現金の発生理由と使いみち)かも分かります。
事業活動は以下の3つに分類されます。
- 営業活動によるキャッシュフロー
- 投資活動によるキャッシュフロー
- 財務活動によるキャッシュフロー
他にもこのようなことが分析できる
キャッシュフロー計算書を読み解くことで次のようなことも分析できます。
- その企業に将来も現金を生み出す実力があるか
- 負債の返済能力があるか
- 将来追加資金を必要とするか
- 同じ会計期間における「損益計算書上の収益」と「キャッシュフロー計算書上の現金増減」の違いは何か
それでは3つの事業活動について見ていきましょう。
営業活動によるキャッシュフロー(Cash Flows From Operating Activities)
営業活動によるキャッシュフローとは、いわゆる本業に関する活動に関するキャッシュフローのことです。
なお、営業活動によるキャッシュフローの計算方法には2つあります。
直接法
直接法とは、取引(キャッシュ増減のイベント)ごとに現金の増減を記録し、それを集計した総額を示す方法です。
直接法は、現金の流れを詳しく把握することができるメリットがある一方で、作業が煩雑になるというデメリットがあります。
間接法
間接法とは、損益計算書上の利益を起点として、各種調整をしたうえで、間接的にキャッシュフローを計算する方法です。
間接法では、細かい内訳を把握することはできませんが、早く計算できるため、多くの企業は間接法による計算を採用しています。
例えば、損益計算書上では、金銭の増減として取り扱われるものの、実際にはキャッシュ自体の移動が発生しないものがあります。
例は以下のとおりです。
- 売掛金の発生(まだキャッシュを受け取っていないが収益として計上されている)
- 減価償却費用(キャッシュ自体の減少はないが、毎年一定の費用が控除されている)
間接法では、上の2例の取り扱いは以下のとおりとなります。
- 売掛金の発生・・・起点となる利益から差し引く(実際にはキャッシュを受け取っていないため)
- 減価償却費用・・・起点となる利益に足し戻す(実際にはキャッシュ自体の減少はないため)
投資活動によるキャッシュフロー(Cash Flows From Investing Activities)
本業以外での、企業の固定資産に関連する活動
投資活動によるキャッシュフローには、以下の活動によるものが含まれます。
- 土地や建物、設備什器の売買
- 有価証券の売買(※株などの有価証券は「現金(キャッシュ)」に含まれません)
- 貸付の実行または貸付元本の回収
投資活動によるキャッシュフローは、本業以外での、企業の固定資産に関連する活動とイメージすると分かりやすいです。
(参考)固定資産についての関連記事
企業として成長するためには一定の投資活動は必要ですが、積極的な投資活動(設備投資・他社の株式の購入)は、キャッシュフローの観点からはマイナスなイベントになってしまうことに注意しましょう。
フリーキャッシュフローについて
ここまでで「営業活動によるキャッシュフロー」と「投資活動によるキャッシュフロー」について説明しました。
「営業活動によるキャッシュフロー」から「投資活動によるキャッシュフロー」を差し引いたものを「フリーキャッシュフロー」といいます。
その名の通り、自由(フリー)に使える現金(キャッシュ)が「フリーキャッシュフロー」です。
フリーキャッシュフローは、借入金の返済や株主への配当などに充てられます。
フリーキャッシュフローがプラスの企業は、金融機関からの融資に頼らずに事業活動を行えますので、健全性が高いとみなされる要素の一つとなります。
財務活動によるキャッシュフロー(Cash Flows From Financing Activities)
本業以外での、企業の負債・資本に関連する活動
財務活動によるキャッシュフローには、以下の活動によるものが含まれます。
- 自社株の発行・取得
- 配当金の支払い
- 社債の発行・償還
- 金融機関からの借入・返済
財務活動によるキャッシュフローは、本業以外での、企業の負債・資本に関連する活動とイメージすると分かりやすいです。
負債・資本に関する関連記事はこちら
自社株や社債を発行すれば、それと引き換えに現金(キャッシュ)が手に入りますので、キャッシュフローはプラスになります。
反対に、自社株の取得や社債の償還を行った場合はその逆(マイナス)です。
また、金融機関からの借入は、企業として借金をすることになりますのでネガティブなイメージがあるかもしれませんが、それにより現金が手に入りますので、キャッシュフローはプラスになります。
反対に、金融機関への返済はキャッシュフローの観点からはマイナスになります。
期末現金残高について
これまで説明してきた、3つの活動のキャッシュフローを合計したものが「期末現金残高」として「キャッシュフロー計算書」の最下段に記載されます。
いかがでしたでしょうか。
理解が深まりましたでしょうか。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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