今回は、「moral」と「morale」2つのモラルハザード(モラルリスク)についてご説明いたします。
2つのモラルハザード(モラルリスク)について
リスクマネジメントにおいてハザード(hazard)は「損失の可能性を高める状態」のことであると別のブログ記事でご紹介しました。
このハザード(hazard)にはいくつか種類がありますが、今回は「moral」と「morale」の2つのハザードについてご説明いたします。「moral」と「morale」、どちらもカタカナ読みでは「モラル」でややこしいですが、それぞれは明確に区別されています。
なお、英語では「moral hazard」、「morale hazard」と記載されますが、日本においては特に前者(moral hazard)のことを「モラルリスク」と呼んでいます。
moral hazard(道徳上のリスク=モラルリスク)
「moral」には「道徳上の」、「道義をわきまえた」という意味があります。
つまり「moral hazard」は「人が故意に損害を起こす可能性が高い状態」のことです。
分かりやすいのが、保険金の不正請求、保険金詐欺です。
保険業界の歴史は、このmoral hazard(道徳上のリスク=モラルリスク)との戦いの歴史でもあります。
保険の制度を悪用して保険金をだまし取ろうとする犯罪者はいまだに存在しますし、時には保険業務を知り尽くした保険会社の職員が関与することさえあります。
初めから存在しなかった事故をあたかもあったかのように装うのも不正請求ですが、実際に起きた事故に関して、本来の損害よりも多くの保険金を不当に要求するのも不正請求です。
保険会社では、新しい保険契約を引き受ける際は、そこにmoral hazard(道徳上のリスク=モラルリスク)が潜んでいないかを十分に審査しています。(例、契約者は金銭に困っていないか、年収と大きくかけ離れた保険金額になっていないかなど)
morale hazard(注意力のリスク)
「morale」には「やる気」、「気力」、「意気込み」という意味があります。
つまり「morale hazard」は「注意力のリスク」を表します。morale hazard(注意力のリスク)の具体例は以下のとおりです。
- 運転ミス
- 火の不始末
- カギのかけ忘れ
- 作業手順もれ
これらのような「うっかり」によって損害が起こる可能性を高める状態が、morale hazard(注意力のリスク)です。
人間誰しも「うっかり」はありますので、このような事故を完全に防ぐことは難しいですが、複数の人で作業をしたり、従業員の教育を徹底したりすることで、リスクを軽減することが可能です。
「moral hazard」と「morale hazard」の共通点・相違点
共通点
どちらも人の行動がハザード(hazard・損失の可能性を高める状態)に影響を与える。
相違点
- 「moral hazard」・・・故意、わざと
- 「morale hazard」・・・うっかり、不注意
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まとめ
「moral」と「morale」2つのモラルハザード(モラルリスク)について
- 2つのモラルハザード(モラルリスク)について
- moral hazard(道徳上のリスク=モラルリスク)
- morale hazard(注意力のリスク)
- 「moral hazard」と「morale hazard」の共通点・相違点
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