

今回は、大数の法則を将来予測に活用するための3条件についてご説明いたします。
(はじめに)大数の法則とは
大数の法則とは「より多くのデータがあれば、それだけ統計的な平均値・確率に近づく」という確率論・統計学における基本定理です。
よくある例えがサイコロです。
サイコロを振って「1」が出る確率は10回振った程度ではばらつきが出てくるかもしれませんが、何千、何万回と振れば「1」が出る確率は「6分の1」に限りなく近づきます。
生命保険や損害保険はこの法則を事業に活用しています。
生命保険会社や損害保険会社は、何百万件もの生命保険契約や自動車保険契約を引き受けることで、それら契約全体を一つのかたまりとして捉えることができます。
なお、
それら契約のうち、どの契約で事故が発生するかまでは特定はできないものの、契約全体として年間におよそ何件、いくらくらいの保険金を支払うのかの予測をすることができます。その予測された支払保険金に運営経費と利益とを合算して事業化しているのです。
大数の法則を将来予測に活用するための3条件

それでは、大数の法則を将来予測に活用するためにはどのような条件があるのでしょうか。その3つの条件についてご説明します。
過去の十分かつ信頼できるデータがあること
一つ目の条件は、過去の十分かつ信頼できるデータがあることです。
統計的な平均値・確率に近づくだけの、十分かつ信頼できるデータがなければ将来予測に役立てることができません。
ある例:自賠責保険
例えば、自賠責保険においては、損害保険会社1社だけではなく、複数の損害保険会社から収集した大量の契約・支払データを活用して保険料決定に役立てています。(外部データも用いています)
これらの情報には、大数の法則を活用するのに十分な量かつ高い信頼性があると言えます。
ない例:地震保険
毎年一定の割合での発生が見込める自動車事故に比べ、数十年に一度起こるかどうかという地震発生の予測はより困難です。大数の法則は当てはめにくいといえます。
そのような場合は、過去のデータに加え、外部データの活用により比重をおいて将来の支払保険金を予測します。
過去のパターンが将来も同じように起こること
二つ目の条件は、過去のパターンが将来も同じように起こることです。
以下のような場合は、過去のパターンを将来にあてはめにくい例です。
過去のパターンがあてはまらない例:自然災害

地球温暖化による気候変動リスクはすでに顕在化しています。
巨大化した台風や長期化する集中豪雨が原因の、過去には起こらなかった損害が現実に起こっています。
気候変動リスクを原因とした自然災害は、これまで起こらなかったからといって、将来も起こらないとは言えない状態です。これからも想像を超えるような被害が発生する可能性があります。
このようなリスクに対しては大数の法則を活用した将来予測は困難です。
過去のパターンがあてはまらない例:新しいリスク、新しいテクノロジーに関するリスク
例えば、サイバー攻撃による損害のリスクは比較的新しいものです。誰もがインターネットを自由に使える時代でなかった頃は、サイバー攻撃によるリスクはほとんどありませんでした。
また、自動運転などの新しいテクノロジーも未知の分野です。運転が自動化されることで自動車事故が大幅に減少することも期待される一方、システムの不具合によるリスクも懸念されています。
このような新しいリスク、新しいテクノロジーに関するリスクも、大数の法則を活用した将来予測は困難です。
将来も十分なデータが確保されていること
三つ目の条件は、将来も十分なデータが確保されていることです。
将来予測のための十分なデータがあったとしても、将来にも十分なデータがなければ、将来の結果に大数の法則が当てはまりません。そのため将来の結果にばらつきが生じてしまいます。
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まとめ
大数の法則を将来予測に活用するための3条件
(はじめに)大数の法則とは
大数の法則を将来予測に活用するための3条件
- 過去の十分かつ信頼できるデータがあること
- 過去のパターンが将来も同じように起こること
- 将来も十分なデータが確保されていること

最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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